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「三項関係」

地元のNPO法人が主催する発達支援講座で、北海道教育大学釧路校の二宮信一先生の講演を聞きました。具体的な「ココロとカラダほぐしあそび」については先生の著書を参考にしていただくことにして、この講演の中で印象的であったことを紹介します。

「三項関係」について

「三項関係」という言葉は自閉症スペクトラムがどのような障害であるかを学ぶ時に必ず出てくる言葉です。

一般に自分と相手との関係を「二項関係」といい。たとえば「母が子を見る・子が母に見られる」「子が母を見る・母が子に見られる」という1対1の関係のことです。

「三項関係」はこの1対1の関係に対象物が加わるものです。

私の今までの理解は、

母と子の前に犬がいる時、母の指さしや「ワンワンね」の声かけに対して子が犬の方を向き「ワンワン」ということである。自閉症スペクトラムの子はこの「三項関係」が築きにくい。

という程度のものでした。講師は奈良女子大学の浜田先生の「三項関係」の知見を紹介され、

子は母の目の方向で何を見ているかを理解する。このことによって「名づけ」ができる。1才ごろになると子は母が対象物を見ているかどうかのチェックを入れる。また、その対象物とどのように関わっているかを見る。

対象物がコップの場合、物体であるコップの中にはコップの意味はない(単なるガラスの筒のようなもの)。人の行為(コップで水を飲む)の中に意味がある。

母が対象物を見ているか、また対象物とどのように関わっているのかに対して関心を持ちにくい時、「三項関係」は成立しにくい。

つまり、対象物は見えているが、対象物との関わり方を見ていない、つまり対象物の持つ意味を獲得することができない。目的的にとらえることができない。

ミニカーを車のおもちゃとして遊ぶのではなく、タイヤをクルクル回し、キラキラするものとして遊ぶ理由がこれで分かります。

私たちの身の回りの物すべてに私たちは意味を持たせています。しかし、「三項関係」が築きにくい子どもにとっては、意味を持っているものが大変少ないと言えるのです。

浜田先生はこれを「無意味の海」に浮かぶ数少ない「意味の島」と名付けています。

「無意味の海」という、わからない世界の中で生きている子どもたち、数少ない「意味の島」しか持っていない子どもたちが自閉症スペクトラムの子たちだといえます。

この小さな小さな「意味の島」に乗っていることを、私たちには「こだわり」といっているということに気づきました。

意味の島に乗れない子どもは、

今、ここで起きていることがわからない。

本人は常に不安の中にいる。

不適切な行動をしているのではない。それは、「とんでもない」想定外のことが日常的に起きていることへの本人なりの対処である。

時間・空間・人間関係・ルール・形式などの見えないものを、わかるように提示されることで理解できるようになる。

このような理解を広めていくことと、「三項関係」の築きにくさを補完するための取り組みを続けていくことが大切であると思いました。

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コメント

「無意味の海」に浮かぶ数少ない「意味の島」と捉えれば、
「こだわり」は、その子なりの対象物への理解の仕方であり、
不安や何らかの苦しみから逃れようとして、自分なりに工夫して
生み出した対処法であると考えられるのですね。

そう思えた時、私たちは自閉症児・者の示すこだわり行動を
あたたかい目で見ることができると感じました。

そして、目的的行動がとれるようになった自閉症者の多くが、
自閉症のままで、環境に適応して、自立している姿を見るとき、
多くの希望と可能性を信じることができるように思えます。

投稿: eru | 2009年1月12日 (月) 21時13分

私もeruさんのおっしゃる通りだと思います。

「意味の島」を増やし広げる取り組みの方向性をこれから探っていきたいと考えています。
まずは、浜田 寿美男先生の著作を何冊かこれから読んでみることにします。
できたらまたこのブログで報告しますね。

投稿: BOGEY | 2009年1月12日 (月) 21時41分

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