カテゴリー「OTの視点」の記事

感覚欲求

人は興奮しすぎず、ぼんやりしすぎない、適切な目覚めの状態を維持したいという欲求がある。これを感覚欲求という。これは食欲などの生理的欲求と同じレベルの欲求である。

感覚欲求運動として以下のような行動が見られる。
椅子をガタガタ鳴らす。離籍する。クルクル回る。
(前庭感覚不足)
物や人を叩く。鉛筆を噛む。体の一部を動かす。
(固有感覚不足)
大人から「問題行動」と見える行動も、子どもにとっては脳を調整している行動である。

感覚欲求を充足させるために
固有感覚
・休み時間におもいっきり体を動かす。(鬼ごっこ、リレー)
・トランポリン
・狭い空間を用意する
・教師と相撲をとる
・ジャングルジムや登り棒
・噛む道具
前庭感覚
・ブランコに乗る
・目的的に体を動かす機会を作る
触覚
・触れていられるものを用意する
・ボディブラシを持たせる
・小さく切った人工芝を椅子の裏に貼る
・風船に小麦粉を詰めたものをにぎらせる
・クッシュボール

(京都府作業療法士会特別支援教育OTチーム作成「特別支援教育に活かす作業療法の知と技」より)


私の勤務している自治体では、多くの支援学級に大きなトランポリンが備品としてあります。いくつかの学級にはOTの訓練で使われる大きなブランコが設置されています。計画的に指導・支援に使われている場合もあれば、休み時間の「お楽しみ」用に使われているところもあります。いずれにしても、子どもたちの「感覚欲求」に応えられるようにしています。
主治医からブラシを勧められて感情的になった時に自分でブラシングをしている子もいました。効果は明らかではありませんが、(プラセボとしても)ある程度落ち着くことができていたようでした。
「安心グッズ」として小さいボールや指人形の様な物をポケットに入れている子どもたちもいました。
ちょっとした個別の対応や工夫で、「安心できる」「楽になれる」「がんばれる」要素として、「感覚欲求」への対応は有効なようです。


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覚醒

覚醒とは、脳の目覚めの程度のこと。一般的に覚醒が下がるとぼんやりした状態に、上がると興奮した状態になる。適切な状態であることが、適応的な行動、学習を保障する。

覚醒状態を適切に保つために、感覚刺激や興味ある活動、適切な課題を用いることが有効である
1 覚醒を上げるためには
エアークッション。背伸びなどのストレッチ。体を動かす、歩く、声を出す。
高い所に登る・跳び下りる。トランポリン。マットに挟まれる。ブランコ。鉄棒。
2 覚醒を下げるには
マッサージ。自分の体や好きな感触の物を触る。静かな、暗い環境。

(京都府作業療法士会特別支援教育OTチーム作成「特別支援教育に活かす作業療法の知と技」より)

AD/HDのお子さんに以前処方されていたリタニン(塩酸メチルフェニデート)はアメリカではヘロインなどの麻薬の次のランク(スケジュールⅡ)されている中枢神経刺激剤で、覚醒レベルを上げる作用があります。
AD/HDのお子さんの多動がこの薬で解消される仕組みは、「多動」によって覚醒レベルを上げようとしていることを薬物によって代償していると考えるのか、覚醒レベルが低いことによって「多動」になっている(ある児童精神科ドクターの説明)ことを解消しているのか、ドパミンの調整の問題(注1)なのか私には解りませんが、子どもの覚醒の状態をきちんと把握して、適切に調整できるよう環境を整えたり支援することは重要なことです。

45分の授業の中で、ずっと座って難しい話を聞いているような授業はどの子にも退屈で苦痛を感じるものです。子ども同士での話し合いや作業が適切に授業に組み込まれていたり、課題が適切なものであれば多くの子どもたちは意欲的に参加できるといえます。授業で覚醒レベルを適切にするとは、このような「子どもを主体とした授業」をすることだとも言えるようです。
「多動傾向」のあるお子さんの場合は、より一層の配慮が必要になります。
ある1年担任の先生は、1時間に何回も近くに行って声をかけたり、教師の手伝いをさせることによって教室の中でも動くことを保障したりしていました。これはその子の「覚醒」レベルをコントロールしていたことになるのかもしれないと思いました。

子どもの行動を「覚醒」レベルで見直すことは大切なのかもしれません。
正直なところ、私にはまだ解らない、理解できていないことが多いのですが・・・


(注1)メチルフェニデートによる ADHD の症状改善の作用機序は詳しくは知られていない。ADHD は脳内のドパミンの不均衡によって起こると考えられている。メチルフェニデートはドパミンの再吸収阻害剤として働くとされる。すなわち、シナプス間隙からドパミンを神経細胞内に再取り込みするトランスポーターをブロックすることにより、シナプス間隙のドパミンの量を増加させる。原文はこちら

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前庭感覚

前庭感覚は重力や回転、加速度を感じとる感覚で、受容器は三半規管と耳石器である。
以下の機能と関連する。
1 覚醒の調整 強い前庭感覚は脳を目覚めさせ、ゆっくりとした前庭感覚は脳を落ち着かせる。
2 筋緊張の調整 重力を感じると姿勢を保つために必要な筋肉の筋緊張を高める。
3 目の運動 眼球を安定させるために反射的に目を動かす筋肉をコントロールする。
4 姿勢調整(バランス) 反射的に姿勢を調整している。
5 自律神経系 前庭感覚は自律神経系とも関係する。
6 情緒の安定 適度な前庭感覚は情緒の安定と関係する。

前庭感覚をうまく処理できないと
・高さや動きに対して過度な恐怖や不安を感じることがある。
・前庭感覚を感じとりにくい子どもは刺激の不足分を補おうとして、くるくる回る・トランポリンを跳び続ける、たくさん動き続ける、といったことがある。
・授業中に姿勢をまっすぐに保てない事がある。
・目の運動がぎこちないため、文字を読み飛ばす、文字を写すことが難しい、文字を覚えることが難しい、ボール運動などが苦手。
・バランスが悪く、運動のぎこちなさがある。

(京都府作業療法士会特別支援教育OTチーム作成「特別支援教育に活かす作業療法の知と技」より)

「前庭感覚」もよくOTさんから聞く言葉です。
自閉症スペクトラムのお子さんが、トランポリンやブランコ、くるくる回ることが好きなことはよくあります。
これを刺激の不足分を補う活動ととらえ、このような「感覚欲求」がある子どものために、積極的にトランポリンやブランコをさせて欲求を充足させることを提案しています。
「やめさせる」のではなく場面に応じた活動や目的を持った趣味活動などで感覚欲求を充足させるようにすることは、とても大切なことだと思います。
目の運動や自律神経、情緒との関係についてはもう少し掘り下げてみていく必要があるようです。


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固有感覚

固有感覚とは、目を閉じていても筋肉や関節の動きを感じとれる感覚(深部感覚)のことである。
姿勢や運動に関する情報を脳へ伝えるもので、「筋緊張が低い」と固有感覚は感じとりにくくなる。

以下の機能と関連する
1 力加減の調整
2 手先の器用さ
3 身体図式(機能的要素)
4 覚醒の調整
5 多動

固有感覚をうまく処理できないと
・運動のスピードを調整できにくく、ぎこちなさが見られる。
・力加減が難しいため、行動が乱暴になる。
・手先が不器用になる
・疲れやすい
・じっとすることが苦手
になる可能性がある。

(京都府作業療法士会特別支援教育OTチーム作成「特別支援教育に活かす作業療法の知と技」より)

OTさんから一番よく聞く言葉の一つ「固有感覚」です。
運動発達の段階を「固有感覚」のレベルで分析することは必要だということはよくわかります。
微細運動や粗大運動の発達の源泉がすべて「固有感覚」と「受容感覚」に集約されるとは思いませんが、子どものアセスメントには「入力系」について知ることも大切だと思います。

離席や手遊び、鉛筆を噛むなどの行動はそうすることで「固有感覚の欲求を充足させる」との記述もありました。
そうであれば、なぜこの状況で、子どもは離籍や爪噛みや鉛筆かじりをして「固有感覚の欲求を充足」させようとしているのかという分析が必要になってくると言えます。
私は小学生の3・4年生の頃、鉛筆の芯が見えるぐらい全ての鉛筆を噛んでいました。それは、兄の長期入院のため、独りで過ごす時間が多かったからだと思っています。こうゆう「文脈」も大切にしたいと思っています。


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触覚

触覚には次の2つがある。
・識別系:自分が触れているものが何であるか識別・探索する働き。
・原始系:不快等の感覚刺激を避ける働き。

触覚は以下の「機能」と関連する。
1 安心感・情緒の安定
2 覚醒の調整
3 触ることによる認知
4 手先や運動の器用さ
5 身体図式(地理的要素)

触覚を適切に脳で処理できないと、
・普通は不快でない程度の触覚刺激を不快に感じ、拒否反応(触覚防衛)を起こす。
・手先が不器用になる
・運動が不器用になる

(京都府作業療法士会特別支援教育OTチーム作成「特別支援教育に活かす作業療法の知と技」より)

触覚刺激も感覚と同様に感じ方には個人差が大きいようです。といっても、私は感覚と触覚の違いをあまり区別したことはありませんでした。
ここでは、触覚の機能に安心感を得ることと覚醒のレベルを調整することが挙げられています。触覚と覚醒レベルの調整については、もう少し詳しく見ていかないと私には解説できません。

また身体図式については調べ出すときりがないぐらいの文献に出会います。
一応 身体像(body image) 身体概念(body concept) 身体図式(body schema)はそれぞれ視覚優先・知覚優先・感覚優先する身体像として定義されているようです。
しかし、これも、哲学・精神分析学・深層心理学・脳科学・ロボット工学・・・など多くの分野で少しずつ違ったとらえ方がされており、定義が統一されていないようにも思いました。

「覚醒」や「身体図式」など、あまり今までなじみでなかった言葉がでてきたときは、自分なりにしっかりと納得がいくまで調べてみることが大切なようです。


「身体図式(body shema)とは、さまざまな相対的印象を組織する上で、中心となる1つの基準点として身体を用いることである。つまり「われわれは自分の身体を基準にして周囲の対象をとらえ、空間内に定位し、その位置をわれわれの身体の位置との関連において判断する」

乗馬の有効性を書いた論文にも、こんな一節がありました。

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感覚について

感覚には次の2つがある。
特殊感覚:受容器が限定 視覚・聴覚・臭覚・味覚・前庭(平衡)
一般感覚:受容器が広範 触覚・温度感覚・痛覚
感覚の特徴として
・感じ方には個人差がある
・感じ方は環境により変動する
・感じ方に主観が影響する
(京都府作業療法士会特別支援教育OTチーム作成「特別支援教育に活かす作業療法の知と技」より)

感覚刺激を感じとれる強さに個人差があることは、多くの場面ですべての人が経験していることです。
私は遊園地のジェットコースターは大好きですが、回転ブランコは大嫌いです。
大きい音に過敏な息子はUSJのジョーズでずっと耳を押さえていました。
とても匂いに敏感なお子さんを担任したこともあります。

以前、蛍光灯のチカチカや音が気になるお子さんのことを記事に書いたことがありますが、通常学級でも様々な感覚において過敏・鈍感なお子さんが在籍していることを知っておくべきです。

教室からの飛び出し(エスケープ)があるお子さんが、どんな時に飛び出しているかを調べてみたら、教室の状態が大変騒がしい時であったケースがあります。
教師からすれば「飛び出し」ですが、その子にとっては過剰な音の刺激から「エスケープ(免れる・束縛から逃げる)」だったのです。

その子が「なぜこれぐらいで?」と思うのではなく、この子は「どんなふうに感じているのか?」をイメージできる支援者でありたいものです。

支援学級では、感覚を重視した取り組みも行われています。そういえば、教室に大きなブルーシートを敷いて小麦粉でコネコネ遊びをして粉まみれになっていたのは元相棒とMくんでした・・・
このあたりのことは「感覚欲求」の項でも触れることにします。

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OTのエビデンスについて

我が家には「臨床発達心理士の私」と「STの娘」と「OT志望の息子」がいます。

OTのエビデンスについては、病院でリハビリに従事している娘とよく話をします。「そんなこといってたらSTだって同じだよ。」とのこと・・・
私たち療育に携わっている者にとっては、OTさんからのアドバイスはとても的を得ているように思うことが多かったのは事実です。
「感覚統合はあなたたち素人には解らないでしょ」なんて、あからさまにスペシャリストぶるOTの人もいたので、ちょっと斜めから見ていた時期もありました。

自分できちんと判断するには、やっぱり自分で学ぶことが必要なので、「OTの視点」なんていう新しいカテゴリーを作ってみました。

参考文献は、京都府作業療法士会 特別支援教育OTチームの作った冊子です。
こちらからダウンロードできます。
↑これ、eruさんから教えていただきましたww

どこまで続くかは???ですが、とりあえず連載開始ということにします。
(何年か後に、息子が読むことも期待して(^_-)


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OTの視点からのアプローチ

就学前の療育施設に勤務されているOTさんのお話を聞きました。

「座れない」ということ一つにしても、何故できないのかをきちんと分析することが、支援のスタートになるとのことでした。その子の筋力の問題なのか、バランスなのか、感覚なのか、意欲なのか、活動の内容なのか・・・
一つの行動を細かく分析することが大切だということでした。
このあたりは「課題分析」と同じ考え方です。(→自立支援のための課題分析

実技ではボールを投げる動作を、できるだけ細かく分析したり、利き手でないほうの手で投げる「不器用な」動作にどのようなアドバイスをするとよいか、縄跳びを跳ぶために必要なことは何か、などをグループに分かれて考えました。
利き手でない方の手でボールを投げようとすると、ボールの感覚ですら随分違うことに気付きます。利き手だけでなく、利き足や軸足が投げる動作に大きく関わっていることもよくわかりました。これらの感覚と運動の苦手な子の感覚はよく似ているといえます。縄跳びも、手首を回さずに跳ぼうとしてみたり、胸を張って跳んでみると、苦手な子の動きを経験(再現)できたりします。

アドバイスをするにしても、あれもこれもとたくさん注文を出すよりも、適確なポイントを指示すること、できた動作をほめたり、取り組んでいる姿をほめることがとても効果的であることも実感できました。

体の動きや感覚をもう一歩踏み込んで詳しく見ていくこと、分析することを毎日の教育実践に取り入れていくことは大切なのだと思います。

キャッチボールをしていたY先生とN先生、おつかれさまでした♪

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